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06-16 20:58

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06-15 10:24

イオク様…、ピント外れ過ぎ…。ポンコツにも程がある…(汗)ジュリエッタもテキトーに手とか脚とか撃っちゃえばいいのに…、言葉で云っても通じないよ…、イオク様は使用言語が違うっつーか、アルゴリズムが違うカラ。そして、いつの間にかジュリエッタに呼び捨てにされているヴィダールさんですが!満を持して? 遂にマクギリス様と対決! …かと思いきや。「俺には解らない」って。科白の内容からしてヴィダールがガエリオなのは確定...
『鉄血のオルフェンズ』第37話「クリュセ防衛戦」

「こんなとこで寝て…… 風邪引くよ」
 彼女は僕の鼻を摘んだまま優しく微笑みかけた。
「ひゃい」僕は笑顔に見惚れながら、そう答えるのが精一杯になっていた。瞬きも忘れて――
 彼女はぷいっと投げ出すように鼻を放すと口角をにっ、と上げて、僕の目を覗き込む。
「あなた、ひょっとして家出? どうしてここで寝てたの?」
 彼女の口が動いているのはわかったけど、僕はぼうっ、として、彼女の言葉が耳に届いていなかった。まるでフルートやバイオリンの音が鼓膜を揺らすように彼女の声音に酔っていた。
 彼女の表情が変わる。「あなた、日本人よね?」
 そう言って、少しムッスリする。僕は慌てて、はいを連呼して答えた。
「で? どうしてここで寝てるの? 家の人と喧嘩でもした?」
「いえ…… 一人暮らしなんで…… 」
「だったら、何故?」
「その…… 大学のコンパで…… 飲み過ぎて…… 」苦し紛れにそう言った。少し目を細めた彼女は首を傾けて、また鼻を摘む。
「嘘! わたしね、仕事柄、鼻が利くの。あんたから酒の臭いなんてしないよ。それより早く帰ってお風呂に入りなよ。ソッチの方が気になった」 
 彼女はそう言うと再び口角を上げた。
「えっ!?」
 僕は彼女の言葉に促されて、自分の体臭を確認する。確かに……
 耳と顔が火照ってしょうがない。
「実は…… 」
 僕は何を語ろうとしていたのだろう? 知らず知らずに失恋話でもするつもりだったのか? よくわからないが彼女の優しい笑みに心が洗われて、素直になれそうな気がした。
 
 彼女にも――
 僕自身にも――

「実は何?」彼女は聞き返しながら、辺りをキョロキョロと見回す。木枯らしが吹いて、彼女の髪が風に舞う。彼女の香りがここまで届く。甘い香りに酔って、僕は言いかけた言葉を忘れた。
 
 今、何と言ったらいいのだろう?
 彼女を含んだ景色が悉く僕の言葉を瞬殺していく。

「あの…… 」
 彼女は僕の顔の前に手を翳し、言葉を遮った。
 僕が言いかけた瞬間、彼女の表情がまた変わっていた。
 ただし、そこにこれまでの穏やかさなどない。険しく眉間に深い皺を寄せ、ある一点を睨んでいるようにすら見えた。
 僕は彼女の視線の先を追ったが、どこを見ていたかなんてわかるはずもない。
 再び彼女の顔を見た時、僕は背中に途轍もない冷たさ…… 恐怖を感じた。

「ちゃんと帰るんだよ…… 」ぼそっ、と言って、彼女は立ち上がるなり、睨んでいた方角とは逆に走りだした。
「あっ!」
 呼び止めようとした時には、もう彼女は遠くにいて、僕の声なんて聞こえないところまで。
 立ち上がって彼女の背中を不安げに見送る。彼女に何が起きたのだろう? あの様子。きっと只事じゃない。
“ドッ ドッ ドッ”大きな足音が聞こえた。そして、刹那に二人の男が僕の近くで足を止める。

「くそっ! あの女、余裕こきやがって!」  
「俺達も随分と舐められたもんだな」
 そう言って、一人の男が「見つけた」と言わんばかりに指差した。その先にいたのは――

 僕の足は思わず走りだす。男達を追って意味もわからず駆け出す。意味など考える暇なんてない。
 僕の耳から街角が奏でる大合唱が消える。この男達の等速的でありながら、まるで揃えるでもない不協和音のセッションが耳に充満した。
 僕も彼女を見つけた。かなり遠くにいて、時々、後ろを振り返る。彼女の姿はさらに遠退く。男達と彼女との距離は近づくどころか遠くなり、ぐんぐん離れていった。
 はっきりとは見えないが振り返って確認する彼女の顔には嘲笑が漂っている。余裕が見受けられる。
 対して、濃紺のスーツを纏うこの二人組は徐々に失速していく。息が荒くなっているのがよくわかる。
 しかし、この二人はいったい何者だ?
 僕は今更ながら勘繰った。
 あのスーツ。とても安物には見えない。傍目でわかる。
 そんなのを着て、女性を追って、街中を走る? 
 警察官? ヤクザ? ひょっとして……

 何らかの秘密結社?!

 いつもならそんな馬鹿げた話と鼻で笑ってしまうようなことが今僕の脳内で現実にあることのように妄想されている。
 妄想は僕の胸中で“真実ですよ”って顔をして、あり得ない映像を次々に見せた。
 
 何れにしても、彼女がピンチであり、男達はその彼女を追っている。
 それは今僕が目の当たりにする現実なんだ。
  
“助けなきゃ”

 心が雄叫びを上げて、足の回転を早める。

「追いつく」
 
 確信が口を割る。

 駅の構内。彼女が人混みに紛れ込んだせいで、それに揉まれる彼らの速度が著しく低下する。
 くそっ、と呻く男の声が大きくなって聞こえた。
 構内を抜け、小さくなったこいつらの美しき獲物はビルとビルの隙間に身を放り込んで、僕達の前から姿を消す。二人は同じ所に飛び込んだがやはり彼女はいなかった。二、三歩進んで二人は漸く止まる。僕は膝に手を付き息を整えているマヌケな狩人達を窺った。
 二メートル程近づくとそのうち一人が僕に気づき、何だお前、と怒声に近い声を出す。

「こんなところで何してるんだ?!」息を切らせて男が一人僕に歩み寄る。
 僕は答えを躊躇ったが、思わず「彼女の関係者です」と言っていた。
 二人は大声で笑う。その笑いには僕を馬鹿にしているカンジが含まれている。押さえつけようとする高圧的な感覚もあった。
「そうか、そうか。キミ、見たところ高校生だろ? いいのか、こんな所で遊んでいて? 子供はさっさと―― 」
 僕は軽く握りこんだ手の甲でそいつの顔面に裏拳を叩き込んだ。男は怯んで後退りする。コノヤロウ、と片割れが僕に睨みを利かす。

「タダじゃ済まさねえぞ! おい、志賀内。コイツ、コウシツだ! やれ!」
   
 彼の言葉尻を掴んで、僕の脳内にリフレインする。

“やれ…… ヤレ…… 殺レ……” 

 その瞬間、僕の意識、感覚は真っ白に――

 体は何らかのスイッチが入ったように勝手に動き出す。
 右の踵を軸に肩を四五度程返す。左足は前へ。両手は肩の高さより低く、脱力して胸の前へ。前を踏んでいた左足をそろりと右に近づけ、手前二〇センチのところ来たら垂直に上下。
 小気味のいいステップを踏み始めるとお得意のキックボクサースタイルを完成させた。

「何のつもりだ?」志賀内と呼ばれた男が怒鳴った。
 怒鳴りながら右手を胸元に忍ばせる。同時に僕の脳は危険シグナルを発する。黒い鉄塊が思考を掠める。発砲されては、いくら僕でも一溜まりもない。
 とっさにガードを固めて、志賀内の胸倉まで勢いをつけて飛び込む。
“ダダッ”という足音が狭い壁と壁にぶつかって反響した。志賀内の顔が大きくなって、僕の視覚に殴り込む。
 間髪入れずに、彼の首にしがみつき、ありっだけの力で引き寄せる。連動して、左を軸足に腰を捻った。
 右足は僕の意識、力を集約して、志賀内の顔面を目指す。
 標的向けて、離陸した右膝はコンマ数秒で彼の顔を赤く染めた。
 志賀内は力を失い、がくりとその巨体を地面に叩きつけた。

 血で染めた右を下ろしながら、僕は次の標的への臨戦態勢を整える。
「お前! 今自分が何をやったか、わかってるんだろうな?!」

 僕は怖気づくこと無く彼との間合いを詰める。三〇センチ、四〇センチ。
 右足を蹴りだす素振りを見せると男は、ひえっ、と言って縮こまった。
 萎えてしまった男の目には、気迫の残骸と呼べるものは欠片も残っていなかった。
 見ている僕もやる気が失せ、構えを解いて腕を組んだ。ちょっと仰け反る風に胸を張り、見下ろすようなドヤ顔を満面に浮かべる。

「…… この野郎!?」
 弱った声でそう言って男は警棒を振り抜く。
 長さ六〇センチの鉄の棒切れは月明かりを浴びて、青白い光を纏っていた。
 普段なら“猟奇的”とか言いそうだが、今は何の脅威も感じない。
 男はブンブンと警棒を振るう。

 振るうのだが……

 僕からかなり遠い所で閃いて、当たるはずもないし、牽制にも威嚇にもなりはしない。
 イケナイ! 笑えてきた。けたけたと笑う僕を見て、男は憤りを感じたのだろう。
 警棒を高く掲げて、僕に襲いかかる。しかし、何ら気迫の籠もらない太刀筋に脅威など微塵もない。
 僕は体をひょい、と捻って、男の太刀筋を躱すと足をかけて転ばせた。
 男はよろけて、冴えないコメディアンのように地面に臥せった。
 そして、軽く右足を上げ、蹴る素振りを見せると、男はまた、ひいっ、と言って逃げ出した。彼の悲鳴は僕の中で優越感となって木霊する。数時間前にあった僕の虚しさなんてなかったことのように僕を満たしている。

「ハッ…… ハハッ…… ハハハッ…… 」
 
 それから僕は身を揺るがすほどの…… 心から零れ落ちるほどの充足感を大きな声にして高笑いした。
 なんて爽快なんだ! 映画のヒーローも子供の頃に見た特撮ヒーローもきっと、こんな気分だったに違いない。これは今後の映画の見方が変わる新事実!

「ちょっと…… キミ?」
 女声がする。あの人だ。ちょっと過去の反芻の後、ヒーロー気取りで振り返る。
 振り返ると不安げな彼女の顔があった。
 僕に近づいて、ゆっくりと志賀内の方を見下ろす。
「あんたがやったの?」
 僕はトム・クルーズばりの笑顔でそっと頷いた。
 そして、高く、高く空を見上げる。そこには月があった。
 月を見ながら、僕の頭の中には妄想が広がっていく。
  
  
ヒーロー(僕)の勝利→喜ぶヒロイン(彼女)→熱い抱擁→それから――

「ぷっ…… 」
 ドラマティックな出会いに感謝したい。
 あっ?! 月にかかったあの雲に誰かいた? ひょっとして神様? キューピット?
 今の僕はたぶん絞まりのない顔をしているんじゃないか?
 こんなんじゃいけない!
 月が見せた甘い妄想を振り切って振り返る。そこにあったのは彼女の潤んだ瞳。照明の裸電球の光と月明かりを収束して瞬いている。目が合うと彼女は目を閉じた。
 僕は近づいて、彼女の前に立つ。
「な、なんて…… 」

“なんてすごい人なの?” “なんて素敵な人なの?”

 そう言われると思った。
 
「…… なんて……」 
 顔を伏せ、声にすらならないほど体を震わせている。そんなに感激しているのか? 無理もない。
 でもこの後のご褒美は期待大だろう。

―― そう思っていた。

 しかし彼女の顔が上向くと、、妄想とは正反対の嫌な予感が全身に押し寄せた。 

「なんてことやってくれたの!!」
 と言って彼女の拳が大きくなる。妄想とは正反対のご褒美を頂いて、僕の記憶はぷっつりkれてしまった。

 そこから先は何も覚えていない。
―― 神様はきっと、あの時、別のことを言いたかったんだね。Zzz…… 

 
 ココニイル僕ノ事情……



 いつの間にか、外の風が冷たくなった。

 途方に暮れる街角に冷たくなった風が吹いて、僕はまた季節が一つ通り過ぎていたのだと知った。
 きっと、辺りの景色もそれに染まっているはずだけど――
 今の僕にはどうでもいいことだった。

 人々の往来の中で遣る瀬無く立ち止まると大きな街路樹に目が止まった。
 
『人間には他の動物よりも遥かに多くの色彩を認識する能力を持っている。つまり、―― 』

 ―― “色覚”という感覚がどの動物より発達しているという。
 高校時代。生物の先生が零れ話程度に話したのを何となく思い出していた。 
 試験や受験に全く関係ない与太話にそんなこと当然だ。分かりきっている。

 その時はそう思っていた。

 僕は、そのまま視線を上向ける。じっと見つめて、この木の傍らでぼんやり佇んだ。僕の背丈よりも遥かに高い樹木には、疎らだけど扇型の葉っぱが残っている。そこへ突然、大風が吹いて、残っている葉っぱを揺らす。
 
 たかだか一迅の風に吹かれ、数枚の葉っぱが吹き飛ばされる。舞って落ちる銀杏の葉。
 これまで仲睦まじく、大樹に寄り添っていた葉っぱ達がいとも簡単に飛ばされていく。まるで、さよならと手を振るようにはらはらと。
 僕は散っていく葉の一枚に心を重ねて、この世の果敢なさに息が詰まった。
「嘘つけ…… 」
 と、一言漏らした。堪らなくて、そう言った。
 多彩な色? そんなものがどこにあるんだ? 僕の心は、いつしかそう叫び出す。
 ここに来るまで僕が目にしていたのは味気ない灰色だけ。
 まるで何かを燃やした跡のような灰そのものの色。
 その灰は僕の肩から背中に降り積もっているように僕の背中を丸めさせる。降り積もって、僕を苦しめる。胸の内では誰にも届くことのない悲鳴を繰り返す。
 僕の苦しみを知らない脳天気なカップル達。目の前を過ぎって、僕の袂を擦り抜けていく。その度、脳の片隅で過去の彩りが鮮明に駆け抜ける。

 …… あんな風に腕を組んで歩いた。
 …… あんな風にじゃれ合った。
 …… あんな風に抱き合った。


 だけど、僕の記憶にあるその光景はどんなものよりも華やいで色付いていた。
 もう、『あんな』日々は僕には戻って来ないんだ。哀しみを押し殺して、ゆっくり顔を上げる。そして、容赦なく僕の視覚に入り込んだモノに堪らなくなって大きな溜息を吐いた。「また…… ここか…… 」

 世界平和を祈るモニュメントが勇壮でありながら、厳かに。何より僕に当てつけるように己の存在を誇示していた。
 まだ暑かった季節に僕たちは、「いつもの所で」と言っては、ここでよく待ち合わせをした。束の間、そんな頃の景色が脳裏を過る。それすら僕は、必死で打ち消す。
 しかし、僕の拒絶を蔑ろに網膜の中。その奥にもモニュメントがそびえ立ち、思い出したくないことを鮮明な映像にして僕に押し付ける。逆らうことが出来ない僕は、立ち竦むしか術を知らなかった。

 また、溜息を吐く。

 出て来たのは、もう溜息ばかりではない。
 頬に糸を張るような温かさを感じる。僕の体は魂が抜けてしまったように力を失う。トンッと膝をついて、前のめりに崩れていく。
「おい、君? 大丈夫かい? どうしたんだい? こんな所で」通りすがった老人が僕を見て、声を掛けてきた。
 僕はそれに応えられない。自分の内面と向き合うので精一杯だった。ただ、浸りたかったのかもしれない。
 懐しい一昨日までの思い出に…… あいつへの愛おしさに…… 何より今、この僕を押しつぶす惨めさにも…… かもしれない。

 涙腺の決壊をきっかけにして、全身の感覚が一斉に開いた。
 膝と手の平に感じるコンクリートの冷たさ。頬を伝っている雫の温かさ。コンクリートを掴むように引っ掻いて擦れた指先の痛み。
 思い出の中のあいつの声、匂い。
 五感は、責め立てるようにお構いなしに堰を切った。
 うおぉ、と言う僕の大声。目の前を覆い尽くすコンクリートの地表に点々と模様を作って、僕の切なさを形にした。
 そうやって、僕はこの街に向けて、胸を埋め尽くすほどの悲しみを訴えかけた。
 うわぁっ、ともう一度。僕は無自覚なままで大声を張り上げた。

 それからどのくらい時間が過ぎただろう?
 思い出の全てを嗚咽に紛らせ、吐き出して、辺りを見回す。現実の景色も次第に光が失せていく。
僕は脱力したままに立ち上がって、右足を一歩。ゆっくり踏み出した。
 相変わらず、冷たい風が吹いていた。雑踏の中、ぼんやりと歩いた。どこで果てるともないモノクロの風景。肺を満たすでもない僕を取り巻く街中の空気。僕を潰してしまいそうなこの星の重力。
 やたらと体が重く感じられた。体はふらふらと揺れて、視界は黒い縁取りで囲まれる。縁取りの黒はどんどん広がっている。ピンホールカメラみたいに。
「そうだった…… 」僕は、今頃になって、その原因を思い出した。
 一昨晩。サークル仲間の修平と徹夜で駄弁っていた。そのまま、大学に行って、その夕方…… 僕はフラれた。
 眠れなくなった僕を今になって睡魔が襲う。
 気晴らしの散歩のつもりで外に出たがこうなることは全く予想していなかった。結局、“気晴らしの散歩”で出来たことは、自らの古傷を抉るだけの自損行為でしかなかったようだ。
 バカみてぇ、と自笑する。呆れ笑いはすぐに欠伸に変わった。
 笑ったら、途端に睡魔は攻勢を増す。さらに一度。大きな欠伸をする。僕は今いる場所で立ち止まり、一先ず休めそうな場所を探した。ベンチでも…… 映画館でも…… とにかく腰を落ち着けられたら、そこで座って休もう。
 暫く見回し、座るのに良さそうなオブジェの台座を見つけた。街頭に立つ犬のオブジェは、笑うように僕を見詰める。犬は嫌いじゃない。僕は誘われるように近づいて、その犬の傍らに座る。
 やっと眠れる。僕はさっきまでのセンチメンタルな自分を思い出して、可笑しくなった。思わず鼻で笑った。
 騒がしい街の騒音。次第に和らいでちょっとしたBGMになっていく。時々、こつこつ、と聞こえる靴音は、まるでおやすみと言っているかのように――
 背中にはブロンズの冷たさが蔓延っているが、寧ろ、それが心地よいとも感じる。

 目の前の風景は、縁取りの中へ。細く、細く。そして、暗くなっていく。
 昂ぶっていた感覚もやがて――

「?!」
 突然、鼻を弄られた感覚にぱっちりと目を開く。

「ねえ、キミ? 大丈夫なの?」
 女の人の声に震えて、心が反応し、色覚は数時間ぶりに躍動していた。
 次々に忘れかけていた色の世界が僕の双眼に雪崩れ込む。
 艶やかに色めく唇の赤。透き通った指先の白。潤ったその先で輝く瞳の栗色。そして、一本一本がシルクのようにきらめく髪の亜麻色。モノクロの中で鮮やかな〈彼女色〉だけが僕の脳を刺激した。 
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