back to TOP

admin |  RSS
 ~序

『ヤクシャ』
 かの存在について考えない日。私にそんな日はない。

『薬叉(やくしゃ』 ヒンドゥー教の精霊にして、仏教の悪鬼。
 前者では、創造神ブラフマーによって創られ、富の神クベーラに仕えた精霊。天上の秘宝の番人として畏れられ、また崇められた。後者ではおぞましい異形を持ち、人肉を貪り、生き血を啜る悪魔として語り継がれている。
 ヒンドゥー教と仏教。共に人類の灯火たる宗教。人に叡智を齎し、幸福を授けるという同じ目的を有しながら、ちょっとした考え方の違いで善きものにも悪しきものにも解釈される『薬叉』
 ヒンドゥー教の伝承があまり語られない日本に於いては『夜叉(やしゃ)』として広まり、悪しきものの象徴として位置づけられた。
 
 そう…… 日本では……

『真理』とは何を信じるか? 何を信じようとするか? また、信じまいとするのか?
 その選択、何れかで捉え方、考え方は大きく変わってくる。

 
 それは『幸せ』にも似ている。

 個々の人格、価値観でそれに纏わる捉え方は、まるで違う。
 健康を害し、貧しさの中にあっても自らを幸福だと微笑む者もいれば、地上の富や名声を手に入れていながら、自らを不幸だと嘆く者もいる。そして、それぞれに幸せを求める。
 人は誰しも「幸せになりたい」という同じ目的を持っている。そこに向かって、ひたすらに日々を過ごしている。
 なのに、ほんの少しのスレ違い、ボタンの掛け違い。そのタッチの差である者は高らかに笑い、ある者は啜り泣く。

 だからこそ、九年前のあの日。私は自分に誓った。

 啜り泣きながらも明日を信じる人達。
 そのささやかな希望を守るため……

 私は……
 日本のこの街で『薬叉』になる。
 
スポンサーサイト
COMMENT FORM
URL:
comment:
password:
Template by :FRAZ